
私たち山中産業が初めて開発した生分解可能な地球に優しい飲料フィルター、ティーロード®ソイロン®。飲料フィルター業界に、山中産業の名を広めた立役者とも言えるティーロード®ソイロン®の開発秘話を、当時の開発担当者が語ります。

PROFILE
元村 正 1982年6月入社
シニアアドバイザー
当社の主力製品である、コーヒーミラクロンやドリップバッグなどの開発を主導する。営業部門や調達部門の長を歴任し、現在はシニアアドバイザーとして、蓄積された知識と経験を生かし、製品の技術開発や知的財産分野についての助言・指導を行っている。
商品開発の背景
「環境に負荷をかけない製品を」
社会問題に対する先代社長の強い信念
1980年代から、日本ではダイオキシン問題やオイルショックなどの社会問題が広がっていました。その状況の中で、当社の先代社長に生まれたのは「環境に負荷をかけない、石油に頼らない製品が必要だ」という強い信念。
当時の山中産業は、窒素ガスを出さないポリエステル製ティーバッグの製造を行うなど、すでに環境負荷を低減させる取り組みを行っていましたが、さらに一歩踏み込み、素材から廃棄までを考慮した環境循環型製品の開発を開始しました。

開発過程でぶつかった課題
価値の高い生分解性フィルターの開発。
こだわりと技術力を尽くして
私たちは生分解可能な植物由来の原料に着目し、大手繊維メーカー様が繊維化に成功したポリ乳酸をフィルターとして製品化することを目指して、同社と共同研究に取り組みました。しかし、製品化に至るにはいくつもの壁が立ちはだかりました。
大きな課題は、ポリ乳酸が石油由来のナイロンと比べて強度を出しづらいことでした。紡糸工程も困難でしたが、その後の織布工程で糸が織機の速度に耐えきれずに千切れる問題が続きました。ナイロンやポリエステルの物性に合わせて、いかに伸縮性や強度を出すか。最適な数値を見つけ出すまでに何度も試行錯誤を繰り返しました。
また、生分解可能な製品としての価値を高めるため、ティーバッグのフィルターだけでなく、糸、タグのラミネート、それぞれの接着部分にも、ポリ乳酸を使用することにこだわった点も難題でした。特にフィルターとタグは使用時に剥がすため、完全に接着させるのではなく、仮接着の状態にとどめる必要があります。この場合、異素材を使用すれば剥がしやすくすることは容易ですが、同一素材で剥がしやすい状態をキープすることは至難の業でした。専用の設備を自社開発し、圧着の強度や温度などの絶妙なバランスを追求しました。

製品誕生の瞬間
「ティーロード®ソイロン®」誕生
改良を重ねて安定した品質へ
開発中には、予想外の嬉しい発見もありました。ポリ乳酸製のフィルターに茶葉を入れると、「急須で入れるお茶に近い味が出せる」という特長があったのです。環境負荷の軽減を最優先にした製品ではありましたが、ティーバッグとして最も重要な機能を兼ね備えていることは、製品価値をさらに高める要素となりました。
こうして成功への情熱と執念で数々の課題に立ち向かい、開発開始から5〜6年の歳月を経て、1999年に世界初のポリ乳酸製メッシュフィルターを使用した環境循環型ティーバッグ「ティーロード®ソイロン®」が発売となりました。発売当初は国内外から大きな注目を浴びましたが、さまざまな使い方をされる中で新たな問題も浮上しました。例えば、電気ポットの中にティーバッグを長時間入れていると、加水分解してボロボロになり、茶葉が出てしまうという事象が発生。このような条件での使用は想定していなかったので、すぐに注意書きを入れて対策を講じました。
発生する問題に迅速に対応しながら当社内でも並行して研究と改良を重ね、発売して20年以上経った現在は、安定した品質を提供することができています。そして現状に甘んじることなく、「ティーロード®ソイロン®」は今この時も進化を続けています。


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